画廊隅の休憩所 310081


気潰れシリーズ(AA)作者に訊きたい事

1:名無し :

2012/06/07 (Thu) 21:01:58

連絡方法どころか名前すら不明。
ゴルゴ13以上の捕まらなさを誇る気潰れ作者氏に訊きたい事を呟くスレ。
ひょっとすると他の人が一緒に考えてくれたり…あわよくば……

そんな一縷の希望を抱くスレ。
476:robots :

2013/06/13 (Thu) 02:08:32

「robots」


最悪の未来。
人と科学が地球を食い潰し、滅ぼした果ての時代。
大陸は粉々に割れ、海に沈み、致死毒の雲から酸の雨が降る、そんな世界。

時折虹色に光る油のような大気と、鉛色の空。
生物の影の無い、酸に溶かされた景色。

僅かに残った陸地の、どろどろの文明の痕跡に、一つの影が蠢く。

鉄の手足が生えた冷蔵庫のような物体は、通称「棺桶」と呼ばれるロボット。
その用途は名前のとおり、内部に人間の死体を保存する事。

人口体液と冷却装置に満たされたそいつの中からは常に「ヴーン」という
低い音が漏れていて、それが酸の雨の中を、歩いている。


滅亡する前の人類は「死」に対して特殊な倫理観を持っていて、
高度な科学技術で死を克服する事こそが文明人の使命と考えていた。

家族や友人との別離は本来許されない悲劇であり、
何としても回避しなければならない「病」だった。

だからこそ彼らは高度な医療技術を駆使し、平均寿命を100歳にまで引き上げた。
さらに老衰や不治の病を克服するため、生体組織を機械に置き換える「機械化手術」も編み出した。
人体のあらゆる箇所を機械で補い、ただただ寿命を延ばし……

やがて「脳」の寿命が来ると、それすらも拒み……

「棺桶」と呼ばれるロボットの中に死体を詰め、冷却保存した。
本人の人格を可能な限りロボットのコンピューターにインプットし、
ロボットに本人の代わりに「人生」を継続してもらう。

死者の人生はロボットを通して間接的に続き、さらにやがて遠い未来で、
中の死体すら蘇生させる事を夢見るのだ。

そんな、ただただ人が死から逃げるためだけに作られたロボット「棺桶」。

四角い無骨な塊は、陶器のようにうすら白く、動くたびにチャプチャプと、
内部の人口体液が音を立てる。

死滅した町にただ一個生き残っていたそいつは、最早喋る事も、思考を表現する事も無く、
酸の雨の中瓦礫を漁り、土を掘り起こし、
死体を見つけては、墓を作って葬っていた。

駅のホームや民家の残骸、酸の雨のかからない場所に死体を埋めなおし、
鉄パイプや椅子の脚で作った十字架をその上に立てる。
そういった事を何年も、何十年も続けた。

やがて、瓦礫の中から死体が出てこなくなると、
棺桶は自分が暮らしていた建物にこもり、壁を見て過ごした。

どこかの国が落とした大量破壊兵器が、建物の半分を吹き飛ばし、
中身をぐちゃぐちゃに混ぜ合わせていった。
朽ち果てたゴミと肉が散乱する長い長い廊下の端で、かろうじて形を留めている「部屋」の一つ。
赤黒い絨毯だったものの上で、直立したまま壁に向かう、棺桶。

そのまま永遠のような時間が流れ、やがて、棺桶の意識が溶けて無くなろうとしていた時。

不意に、部屋のドアが、音も無く開く。




微動だにしない棺桶を、黄色い防護服とガスマスクを着た少女が、泣きそうな顔で見つめていた。




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